殺人劇、前座

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殺人…。一気に空気が重くなる。ついさっき、その現場に居合わせ、一歩間違えれば犠牲者になっていたのだから…!   「この人形を使った殺し合いは、数十年単位で行われました。今回で…、6回目です。…、マスター。貴方にお願いがあります。」   「な、なんだ…?」   「私を…、認めてください。」   胸に手を当て、真っ直ぐに俺を見据える彼女。   「私を認めてください…。認めなければ…、死んで貰います…。」   悲しい目だった。殺しの人形とは思えないくらいに。   「なんで、認めなければ死ななければならない…?」   「人形師たちの意思です。『我の作品を認めぬのなら死ね。』と、言う…。認めなければその人間を殺す様に作られています…。」   認めるか、認めないか。認めないなら今、この場で死ぬ。認めるなら…、殺し合いに参加する…。 答えは、簡単だ。   「俺は、お前を認める。」   「ありがとうございます。途中、何があっても私を認めてください。そうすれば、いかなる境地からも、貴方を守り抜くことを約束します。」   立ち上がり、スカートの裾を手で少し上げ礼をした。   「あなたの望みは何ですか?」   「え…。俺の望み?」   「叶えてあげます。…、ただし…。」   ただし…?   「この殺人劇を乗りきれることができたなら…。さぁ、命じなさい。私の名前は…、10thキリングドール(10番目の殺戮人形)。」   「俺の望みって…!?」   「私たちは持ち主に、死と言うリスクと引き換えに幸運を持たらす人形でもあります。金銭を望むのなら、全てを終えた後に私を売り飛ばしなさい。命を望むのなら、私の命を貴方に捧げましょう。肉欲を求めるのなら、私が貴方をご奉仕します。…、さぁ、命じなさい。」   き、急にそんなことを言われたって…!!   「戦いが終わった後からでもいいかな…?」   赤ドレスは、軽く溜め息をつき、   「目標があった方が必死になれると思ったのですが…、いいでしょう。全てが終わった後に、また私に命じなさい。」
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