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中島敦のこの名言は非常に的を射た言葉であり、また社会の真実なのだろう、と思う。
人には、【自己実現】の欲求が存在する。
これは、「自分はこの世に何かを残す事ができただろうか」、「何かを後世に残したい」といった、自己満足心を満たすべくため存在する欲求である。
これは年を重ねるごとに強くなる欲求なんだそうだが、僕にはこういう欲求が他人と比べても乏しいのではないか。
そんな気がしてならない。
僕にはそもそも夢がない。
というか将来の自分の姿が上手く思い描けないのだ。
自分には人と比べて優れたところや、得意な物がない。
また、特別な趣味といった物もない。
せいぜいが惰眠を貪る事ぐらいだ。
もし目指すべき目標が定まれば、それにベクトルを向け、優先順位を決められるし、何より生きる上で活力が生まれる。
こうなれば、僕も充実した人生が送れるワケだ。
その為にはまず何をすればいいのだろう……………
と、そんな事を考えている内にトースターが甲高い音を上げ、パンが焼きあがる。
うむ。美味い。
やはり朝はトーストにバターを塗って食べるのが一番だ。
一人暮らしも板についてきたようだ。ま、正解には一人ではないが。そこはそれ。殆ど一人暮らしのようなものだ。
というか一切家事をしない母親なんぞ、いらない。…そんな母親は一般的なのだろうか。
まぁ、他と比べた事もないし、比べようとも思わないが。
おっといかん。時間がなくなる。
どうにもこの思考癖は治らない。
まぁ、治す気もないが。
点けっぱなしのテレビからニュースが流れる。
動物園でレッサーパンダの子供が生まれたらしい。
うん。興味なし。
なんて平和なんだ。
他国では未だに戦争やら何やらをやっているってのに。
とはいっても、やはり殺人事件は毎日起きているようだ。
最近この近くで連続殺人が立て続けに起きており、しかも未だに犯人の足取りすら掴めていないんだとか、リポーターが言っている。
おぉ、怖い。
やはり人間、最低限の危機感は持つべきなのだ。うん。
おぉっと。もう登校時間に間に合わなくなる。急がねば。
パンを口にくわえたまま戸締まりをし、急いでチャリを漕ぐ。
今日も角で女の子と衝突するラブコメイベントは起きなかった。無念。
ま、あっても事故になるだけだが。チャリ通やめようかな…。
10分後、我が学校に到着。
【都立赤坂高校】。
全校生徒978人のそれなりの規模の学校。
急ぐか。
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