第五章  坂崎コウ君の非日常③

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完全に思考が停止していた。 急速に色んな情報が頭の中に一気に流れ込んだ為、処理能力が追い付かない。 徘徊?麻美? そして――――殺された? 全く、完全、完璧に意味が分からなかったが、コイツが本気なのだけは分かった。 僕の胸倉を掴む力からもよく分かる。 「何とか言えよ!!」 何とか。 いや、ふざけている場合ではない。 こういう時こそ、クールに、冷静に、だ。 一緒だ。よし、大丈夫。 「けほっ…………ぼ、僕はそれに関しては、なにも知らない。関与もしてない」 胸倉を掴まれているため、喋り辛かったが、ここで喋らなければ、コイツは本気で僕の事を殺す。 そんな嫌な確信があった。 「どの口がほざく!」 胸倉を掴んでいる手に更に力が加わり、首を絞められている様な圧迫感が僕を襲う。 「ぐっ……ほ、ホントだ……信じてくれ……」 僕の言葉を聞くと、鷹虎は僕の目を真っ正面から見た。 狂気しか浮かんでないと思われたその目は、意外にクリアで。たった一つの感情に塗りつぶされているのが分かった。 完全なる怒り。 寒気が走る。怖い。 そしてしばらくして、僕を下ろした。 「クソがっ!!」 そう言いながら、体育館の換気口の鉄枠を殴る。 鉄枠がひしゃげる。 ……うぉーい。 鷹虎の拳からも血が出ていたが、なんつーパワーだ。 素手で人を殺せますよ。 とにかく、身の保身の為にも鷹虎から話を聞こう。全てはそれからだ。
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