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「……行ってきます……」
誰にも聞こえないような声で、ぼそりと言い残し、家を出る。
しかし、母だけが気付いたようだ。
「行ってらっしゃい、刹鬼」
自然と笑みがこぼれる。やはり、母だけが俺の事を分かってくれる。
あー。
にしても、気が晴れねぇなぁ。
全部、昨日のオヤジのせいだ。
イライラしてるし、
ムカムカしてるし、
ムラムラしてるし……これは違う。
あー、クソッ。
近くのゴミ箱を蹴る。ぶっ飛ぶ。当たる。
屯してた不良集団に。
即、絡んでくる。ここらへんの不良はいつだって古典的で、短気なヤツらばっかりだ。
「オイ……お前。俺らに喧嘩売ってんのか?」
……………アー。
こうなるか。どうすっかなぁ。
「何とか言えよ。てめぇ!」
俺の頬を殴る不良A。
…………こりゃあ、正当防衛、だよな。そうだよな。よし、そういう事にしよう。
「売ってるつもりは無かったが……買おう。値段は……うまい棒でいいか?元祖たこやき味」
あ、怒った。
短絡的なバカだな。コイツ。しかも古い。今更、こんな文句になぁ……。
ま、俺も人の事言えねぇが。
「ぶっ殺す」
「やってみろ。クズ野郎」
喧嘩開始。
即、不良Aの鼻を思いっきりぶん殴る。
あ、折れたな。こりゃ。ふふ。
お、全員で来るか。来てみやがれ、小物が。全員返り討ちにしてやる。
やっぱり喧嘩してる瞬間は最高だ。
何も考えずに済む。
このスリルは何物にも代え難い。
ウサ晴らしにもなるしな。
そう。まさにこれだ。
これが俺の日常だ。
俺の失いたくない日常だ。
俺の守りたい日常だ。
俺の愛してやまない日常だ。
親父がムカつくこともあるし、喧嘩でボロボロになることもある。
でも、それも含めて。
俺の――――最高の日常なんだ。
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