-朔夜-

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 少年に、心は与えられなかった。  唯一、彼に与えられた名は、呼ぶときに不便だからと付けられた。  彼が知るのは、裏社会で生きると云うことと、邪魔者を排除する方法。  彼は産まれながらの暗殺者として育てられ、組織の兵器として扱われ続けた。  彼は組織の所有物。意志は不要。  生きる事は必然であり、殺す事は義務。死ぬ権利はない。  それが、裏社会が産み落とした罪の化身。産まれながらに咎人の業を背負わされた兵器。  闇に生きる月の墜とし子。  終わらない夜の忌み子。  だから、彼が与えられた名は《朔夜【サクヤ】》。  月すらない深遠の闇と罪の子供―――朔夜---。  
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