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ジャックとハモン氏はガラス張りのエレベーターにのって、60階のボタンを押した。ところが、ボタンの明かりがつかず、エレベーターもピクリとも動かない。
「どうかしましたか?」
「おかしいですねぇ、私があなた様を迎えに行ったときは動いていましたのに。ちょっと様子を見てきます。」
ハモン氏は小走りで奥の方へと走っていった。
しばらくすると、玄関の方から女性がこちらにやってきた。
「すみません、乗せてください。」
「そんなに焦らなくてもいいですよ。動かないんですから。」
「え、そうですか。」
「ハモン氏が確認に行っていますので、間もなく戻ってくるかと・・。」
「それはどうも。・・・・・・・・あの~」
「何か?」
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「私は・・・・・・・・ハモン氏の知人でこの度会社を設立しようとしてまして、ハモン氏が働いている会社の社長であるカビィ氏に話を伺おうと訪ねたものです。」
そういってジャックは名刺を差し出した。しかし、その名前の部分には[ダクーツ・ヤルジア]と書かれていた。ジャックは著名な人や業界のトップに立つ人たちとの仕事依頼の場合、噂がたって迷惑をかけないように、時々偽名を使っている。
「ダクーツさんですね。私はこの会社の企画部に所属しているリスリ・オシキヤです。」
どうやら彼女はすっかりジャックをダクーツだと思いこんでいるようだ。するとどこかで電源が動く音がした。そしてハモン氏もまもなくやってきて乗り込んだ。
「お待たせいたしました。それでは参りましょう。」
こうして3人を乗せたエレベーターは動き出した。
20階以上になるとジャックに異変が起きた。靴とガラス張りのエレベーターの床がこすりあって音を立て、その顔は深海の海を思わせるかのように、青黒かった。
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