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彼女が世界最高というなら、さしずめ僕なんか世界最悪といったところだろう。簡潔難解にして解明不明快にして簡単難儀にして簡略難略にして荒唐無稽にして奇奇怪怪なこの物語、さあ今すぐにでも僕は死ぬだろう。いや、これは比喩なんかではなく、ましてや隠喩でもなく、直喩ですらない。ただの言葉の羅列だ、気にしないでくれ。
しかし、その信憑性には、僕には十二人の妹がいるとかいないとかという話ぐらいには信じられるだろう。はて、こんなことを討論する気ではなかったのだが、果たして何をやっているのだろうか僕は。
「混沌なんて生易しい、貧困なんて生温い、感情なんて捨ててしまえ。地獄という地国を堪能し、天獄という天国を吐いて捨てたこの僕なんかに何を求めるのか、何を期待するのか、何を要望するのか。この僕には約束なんて通用しない、ましてや契約なんてもってのほかだ。いや、脅しというのならまだ……、いや、ダメだろう。なんにしてもこんな人類最悪……、いや、もはや人類なんて呼べるのかさえわからなくなってきた、この僕に対して、こんな要求、期待、要望をされても困る。僕にはどれをもってしても絶望でしか返せないからだ。」
僕は確かにこう言っていたはずだ。聞こえなかったんなら、同じことを三回までなら言ってあげてもいい。
なのに彼女ときたらどうだろうか。まるで先程の僕の言ったことの全てを聞いていなかったかのように一つ頷いて、
「それで?」
なんて聞いてきやがった。普通の人間が歩まないような人生を、匍匐前進でもするかのように醜く這いずってきたさすがの僕もこんな人間には初めて出会った。
ムカつく。
私語ではあるが、その表現が一番正しいのかもしれない。丁寧に表現するならば、『はらわたが煮えくり返っていますわセバスチャン』である。別にセバスチャンなんかはいてもいなくてもいいのだが。まったくこの女は何をもって成長しているのだろうか。少なくとも彼女の友達なんかには、こんなタイプがいなかったところを見ると、親かなんかの影響だろうか。
ん? 今の理論がわからなかったかい? 有名な格言『君の友達を紹介してみたまえ、君の性格を当てて見せるから』の逆説を利用したまでだ。
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