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僕が家に帰る。すると、まず出迎えてくれたのは近所で噂されるほど強烈に可愛い、僕の妹の一人、その名も『下駄箱ちゃん』だ。
彼女は僕の靴を嫌がる顔一つせずに収納してくれる、有能な妹の一人だ。
そして、次に現われたのは『ハンガーフックちゃん』。彼女も同様に僕の制服を嫌がる顔一つなく掛けさしてくれる。
『タンスちゃん』から服を取り出し部屋着に着替え、『ソファーたん』によりかかり(なぜ『たん』付けかというと、最近購入したばかりだからだ)『テレビちゃん』を見つめてくつろぐ。
皆僕に従順で、逆らおうなんていう気は一つも無さそうだ。
続いて僕は『グラスちん』を取り出し(なぜ『ちん』付けかというと、叩くと、ちん、という音がするからだ)『冷蔵庫ちゃん』から飲み物を頂戴して、グラスちんに注ぎいれる。
そうして、一通りテレビちゃんを見終わった後(ちなみに電源なんか入っていない)、飲み物が入ったグラスちんを持って僕の部屋に行く。
ちなみに僕の部屋は、イコール『勉強机ちゃん』に『パソコンタソ』、『ベッドちゃん』に『クーラーちゃん』達の部屋でもある。そう、彼女達も僕に従順、一切僕を裏切らない。
これで、最後の方は早足だったけど、11人の妹は紹介した。さて、では最後の一人はどこにいるのか、それは既にわかっていた。
僕は最後の妹に気付かれないように両手をわきわきさせながら彼女に近づく。後3メートル、2メートル、1メートル……
とりゃ
「……う~ん、って、え! やだ、ちょっと! お兄ちゃんじゃない!? なんでここにいるの! てか、さり気なくも大胆かつ冷静に胸もんでんじゃねぇ!!」
バチッ! という豪快な音と共に僕は最後の妹に平手打ちを食らった。
「っていうかお兄ちゃん、その部屋着逢聳(あそび)のだよ!? ちゃんと逢聳の服を着るときは許可取らなきゃいけないっていつもいってるだろぉが!」
そう、この通り、これまでとは予想外に、最後の妹は僕に逆らう。大抵のことは許してくれるが、流石に、妹の家に不法侵入した挙げ句、妹の部屋着を着てくつろぎ、更には妹が寝込んでいる時に胸まで揉むという行為は許してくれないようだ。
そんな、今までの妹たちなんて遥かに凌駕する存在こそ、難微逢聳、正真正銘の僕の妹だった。
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