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ふっ、と今までの考えを捨て、窓を眺める。丁度グラウンドでは、この高校の男子生徒がマラソンをしているところで、皆頑張ってゴール目指して走っているところが見えた。
ゴール。ゴールか。そうだな、人生のゴールなんて、しょせんはマラソンのゴールとあまり大差は無いのかもしれない。
頑張って走れば走るほど、息を切らして失速し、だらだらぐだぐだと、それこそなめくじやカタツムリが如く走っていれば、息は切れないし疲れない。
まぁ、その場合は途中、走っているそのことに対して疑問を持ちはじめ、マラソンそのものをリタイアしてしまう可能性もあるのだが。
「ほう、そう考えると中々に共通している部分があるな。」
思い付きだったが、これはこれで面白い。ならば今の僕はマラソンで云うどの辺りの位置にいるのだろうか……
「私の勘だと、一夜はまだ一週目をだらだらぐだぐだと走っている途中だと思うわ。」
彼女は、読心術の使い手なのだろうか。僕の席の隣にいる繭は、ふふっ、と少し笑って更に言葉を続ける。
「だって、そうじゃないと一夜は早く死んじゃうってことでしょ? 私はそんなのごめんだわ。」
なるほど。その言葉にはそういう背景があったのか。てっきり僕のことを馬鹿にしてかと思ったのだが。いや、いっそ馬鹿にしてくれた方が幾分か、いや、大層にましだっただろう。
全くこいつはどこまでも、いつまでも、彼方でも
心の底から狂ってる
「あら、それはあなたの方でしょう?」
そう言って、繭は僕の眼を、僕の腐った魚のごとき眼を、それこそイルカやシャチ、リスや犬の眼のように見てきたのだった。
その時僕がただ一つ、たった一つだけ思ったこと。それは、
全く彼女は、確かに読心術の使い手らしかった。
ということである。
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