くだらない日常

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 ようやく午前の授業が終わりを向かえると、一斉に生徒達は食事という行為に没頭し始める。  食事は人間の三大欲求の一つだといわれるが、睡眠欲、性欲、食欲その全てにおいて僕は別に欲してはいないので、僕は自分の弁当があるにもかかわらずぼんやりと先刻買った小説を眺めることにする。  こうして眺めていると、なんと小説の主人公という物はこうご都合主義なのか。まあ、何もこの現実世界と変わらない世界をこの本に投影されてもつまらないものはある。だが、だがしかしだ。  いきなり主人公の家にメイドなる者が家に押し掛け、住み始めるというのはいささか問題ではないだろうか。まずこの場合メイドの存在そのものを不思議に思うはずなのに、この主人公ときたら 『ラッキー、今日から俺にも春が来たぜ!』  ……いったいどういう神経をしたらこうなるのか。この作者は何がどうして主人公の心理模写をこのようにしたのか。  まず疑問に思うところは、春をメイドとかけているところである。こんな比喩は薄ら寒くて気持ち悪さすら覚える。  更に細かいとこを言うなら、『今日から俺にも』というフレーズにも注目して欲しい。このニュアンスを素直に受けとめてしまうと、他の人は昨日や一昨日、あるいは先週や先月かもしれないが、どこかしら、誰かしらの家にメイドが来たという事実があるということである。  さて、おかしなことになってきた。このままでは親のいない独り身の少年の家にはメイドが無理矢理住んでくる可能性があるということだ。僕の家ももしかしたら危ないかもしれない、家の玄関を開けていきなり 『おかえりなさいませ、ご主人様』 なんていわれたらきっと僕は家を出てしまうだろう。そうなったらどうしようか、この展開では妹の家に行くのが妥当だろうか。  メイドか妹。この二択はある意味僕の人生というか人間的価値観を変えうるかもわからない。ここは是非とも慎重に選ばなくては。 「……う~ん、どちらにしたものか。」  ――結局、僕は昼休み終了のチャイムが鳴るまでメイドか妹の二択を考えていて、小説は最初の五ページ迄しか読めなかったのは僕の人生最大の汚点かもしれなかった。
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