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2008年、5月20日。
いつものように、何の変哲も無い日常を繰り返す筈だったのだ。
呑み込む様に朝食を押し流し、母親の聞き慣れた諸注意を落としながらローファーを足に引っ掛けた。
立ち上がった瞬間、立ち眩みのような何かが体内で弾けるような違和感を覚えたが、昨日の部活の所為だろうと自己解釈した。
扉に手を掛けて押すと、今までだったら眩しいまでの陽光に目を細める筈だったのに。
「…な、に。これ。」
恐々と掠れた声で呟いた。
其処は、画用紙を灰色で塗りたくったような計算を緻密にされた長方形のビルばかりが立ち並ぶ、淀んだ近未来のような世界だった。
いつもの住宅街は何処へ行ったのだろう、お隣の奥さんが玄関を掃除していて前の家の犬が犬小屋から顔を出して挨拶する様に吠えるあの光景は何処へ。
一瞬足が竦んだ。
我が家を振り返ろうとした瞬間、足下が崩れた。
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