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「これあげる。イライラには甘いものがいいよ」
コロンとハート型の小さなチョコレートが掌を転がった。
普通、イライラにはカルシウムって言わないだろうか?
それとも、ただの甘党?
どっちにしても、ちょうど小腹が空いていたので私は有り難くチョコレートを受け取った。
包みを破って、口にポイッと放り投げる。
小さなチョコレートだけど、口いっぱいに広がる甘い味。
「美味しい」
気付けは顔が緩んで私は笑っていた。
単純だって?
ほっとけ。
だって素直な感想なんだもん。
あっというまになくなったチョコレートを名残惜しむかのように、破った包みを折って小さな鶴を作った。
「器用だね」
隣にいたサンタクロースが話しかけてくる。
器用だなんて初めて言われた。
私は料理も裁縫も出来ない無器用な女の子。
自慢じゃないけど、これは胸張って言えてしまうくらいで。
だけど、すっかり忘れていた。
幼い頃、どんなに無器用な私でも折り鶴だけは誰にも負けないくらい綺麗に折れる。
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