第2章 巡り合わせ

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「お母さん… お父さん…」 リラとマオが泣きながらそう呟いた。 こんな静かな夜ではその小さな呟きもはっきり耳に届く。 それを聞いた2人は何となく顔を見合わせた。何故、顔が合ったのか分からないがきっと姉弟の両親を求める声がそうさせたのだ。 「どうせなら私達が姉弟を挟んで親子の様に寝ようか?」 「馬鹿だな」 リキュアの提案をあっさり退けたディートは姉弟に背を向けて再び横になる。 ぶつぶつと言いながらリキュアが姉弟の側で添い寝するために移動する気配が背中越しでも分かった。 久しぶりの雨が降る午後。 無数の波紋が川の水面を叩く。雨はしっとりと大地を濡らし、多くの命に恵を与える。 川沿いの道を一般的な移動手段、二足歩行の大トカゲのリザードに乗って進む。 グリフォンは目立つため遥か上空を飛び、地上の移動速度にあわせて貰っている。 リザードの亜褐色の鱗が雨に濡れ輝く。その背につけられた黒革の鞍に長いこと座っているため、ディートの腰に掴まっているリラが休憩したいと言った。 雨よけのマントは濡れ、重くなっている。 そのマントを着て、斜面の道に生えている木に雨宿りするために歩いて向かう。 「あれって何? あの青くて綺麗なもの」 マオが川向こうのだいぶ離れた場所にある美しい青色の卵型の物を指さして聞いた。 ここからではかなり遠く、雨で見づらいがあれが何なのかディートはよく知っていた。 「あれが王都『ウィンディ』」 苦い物を噛みつぶしたかのような表情でディートは答えた。
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