プロローグ

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「しっかりしろッ!!」 一緒に命をかけ、共に背をあわせて戦った相棒の失われつつあるまだ温かい体をしっかりと抱きしめ、揺さぶる。 命を失った彼は何の反応も見せず、ただゆっくりとモノヘとなっていくのだ。 あいつは最後に何と言ったのか。 俺の分まで生き延びろと、後は頼むと言われた気がした。 今、多くの命が失われ続ける戦場に降る雨が多くの音をかき消し、大切な言葉と思いを流しつくす。 雨のせいなのか、それとも脈打つ傷の痛みで麻痺したのか、彼の心と体は冷え切ってしまった。 荒れ地が続く大地を多く抱える世界。それが『ファイラード』。 雨の恵が極端に少なく、乾燥した大地とほんの一部の森林があり、裕福な選ばれし者達が住む水の結界で守られた水と緑が豊富な王都が世界を支配していた。 ここ数年、王都では森を増やす研究も始まっているが、全く進んでいない。 多くの者が洞窟や地下での生活を余儀なくされ、水や食料を求め過酷な労働をしている。 そして一部の森林の中で最も恐れ、敬う神聖な森『スフィア』にはどんな願いも1つだけ叶えてくれると言われている伝説の神の秘宝が眠っているらしい。 何故なら宝を求めた者達は誰も森から生還した者がいなそれを求める邪魔者を排除するため森が喰らうのだと言う話だ。 そして彼も秘宝を求めて旅をしている者の1人だ。
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