第1章 出会い

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「どこ行った~。隠れてないで出ておいで~」 弱き獲物をいたぶるように楽しそうに歌う山賊の男がナイフを舐めて獲物を探す。 哀れな獲物、桃色の髪を持つ双子の姉弟(きょうだい)は互いの手を口にあて、泣きながら岩陰に潜んでいた。山賊は姉弟のすぐ側まで来ていた。 山賊は姉弟に気づかすに通り過ぎ、姉弟はほっと胸をなで下ろす。 そっと口にあてた手を下ろして前に視線を戻した。 「みーつけた」 山賊は回り込んで姉弟の目の前に現れた。山賊の爛々とした目と冷酷な笑みを見た姉弟はついに悲鳴をあげた。 「きゃぁ!!」 今まで押さえ込んできた恐怖が勢いよく口から出る。 姉弟は手を取り合ってそこから逃げ出した。 もちろん山賊は追うのを止めるわけがなく、ナイフを振り回しながら雄叫びをあげて追ってきた。 姉弟は後ろを見ながら走っていたために前からくる人に気づかずにぶつかった。 ぶつかった人の腰に長年使い込まれた剣を見つけてとっさに姉弟はその者の背後に隠れた。 「お願いします! 助けて下さい!」 姉は顔を見ないまま瞼を強く閉じて助けを求めた。 「にぃちゃん、獲物を横取りする気か?」 「俺はただ助けるだけだ」 剣を抜いた瞬間、目にとまらぬ早さで勝負はついた。 山賊の折れたナイフは宙を飛び、土埃を立てて山賊は地に伏した。 「大丈夫か?」 彼は優しく声をかけた。 姉弟の命を救ったのはまだ幼さが残る青年だった。image=215991633.jpg
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