16人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
本人は優しく声をかけたつもりでも、まだ幼い姉弟には冷たい瞳と無表情な顔の青年に見えた。
光に照らされて温かいはずの金髪碧眼の綺麗な色合いも沈んだ色に見える。
「ありがとうございました!」
弟が勇気を出して声を張り上げた。緊張で体と表情が固くなっている。
それを見た姉が慌てて頭を下げた。
「…君達、この近くに村がないか?」
青年が剣を鞘に収めながら聞いた。
それに体を強ばらせた姉弟が顔を見合わせた。この近くにあるのは姉弟が住む村だからだ。
この青年を案内しても大丈夫だろうかと姉弟は思案した。
「ないなら別に良い」
青年はさっさと先に行こうとする。
「待って! この近くにあるよ!」
心配よりも好奇心が勝ったのか、弟が灰色の目を尊敬と憧れで輝かせて言った。
「なら案内してくれ」
心配する姉をよそに弟と青年は村に向けて歩く。
「ねぇ、お兄さん。名前は何て言うの? どこの人? 職業は何?」
村に向かいながら弟が口早に青年を質問攻めにした。
「名を聞くなら先に名乗れ。俺は元傭兵の旅人だ」
青年は最初と変わらずの表情で答えた。
「失礼しました! 僕はマオ。こっちは姉のリラ。見ての通り、僕達双子!」
「そうか。俺はディート。よろしく」
青年ディートは手を姉弟に差し伸べ、握手をかわした。
最初のコメントを投稿しよう!