第1章 出会い

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夕暮れが山を黒く染め、赤く染め。枯れた大地に根付く生命力がつよい植物達が所々に生えている道を進んでいた。 「あれ? 何だろう?」 最初に異変に気づいたのはリラだった。 「火事だよ!」 マオが目を零れんばかりに大きく開けて言った。 マオの言う通りに村があるだろう山間が赤く染まっている。夕日とは違う赤い炎があちこちに燃え広がっているのだ。 「お兄さん!?」 異変を冷静に判断したディートは剣を抜き、一気に山間に向けて走り出した。 ディートの後を追おうとした姉弟を鋭い視線と声で押しとどめ、この先の村で起こっているだろう悲劇を想像して顔をしかめた。 雨は降っていないにもかかわらず、あの時のことを思い出した。走る体は熱く火照るのに対し、心がどんどん冷たくなっていく。 姉弟が本当に追ってきていないか確かめる時間を惜しみ、先に山間にある村にたどり着いたディートは村の惨状を見た。 明らかに村の者とは異質な者達が村を汚す。 ある者は家に火を放ち、ある者は剣やナイフで村人を襲っていた。 「やめろ!!」 ディートは村中にいる残虐者に聞こえるように大声で怒鳴った。 その声が届いたのか乱入者のディートを見て、下卑た笑みを浮かべ、せせら笑った。 「勇者様気取りの兄ちゃんか?」 「違う違う。きっと、騎士様気取りの頭おかしい野郎だぜ」 己の悪事を悪びれず、ディートを笑う。しかし、そのディートが無表情で剣を構えると賊達は各々の武器を手にして囲む。
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