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村からだいぶ離れ、荒野の中で村に向かう騎士団の姿を見つけた。
いくつもの炎が群れをなして山間へ向かっている。
その光景を見ながら疑問に思った。
何故こんな辺境な場所に騎士団がいるのかと。
傭兵だった頃に知った騎士団の態度や考え方では、王都から離れて、どうでも良いはずの村を助けに行くことも警護することもない。
それなのに何故、こんな場所にいたのか。
「ねぇ。待ってよ」
空から声が降ってきた。この声には聞き覚えがある。
上を見上げるとグリフォンの背に乗った彼女が先ほどの占い師のような格好ではなく、旅人らしい動きやすい服装になっていた。
「無視するの?」
顔を見ただけですぐに前へ顔を戻したディートに突っかかるように聞いた。
「何の用だ?」
「実は私も目的地が同じなの。どうせ危険な場所に踏み入れるなら強い人と一緒にいた方が得かなって。
それに貴方のことが気になってね」
ゆっくり飛ぶグリフォンの背から彼女は楽しげに答えた。
ディートはため息を吐いてただ歩くことに集中する。
「貴方、もしかして元騎士団の人間なの?」
「違う! 俺は傭兵だ!」
思わず語気を荒げ、答えてしまった。ディートはすぐに気持ちを落ち着かせようとする。
その時、あの騎士団の隊長の顔がよぎり、嫌な者を思い出したディートは顔をしかめた。
それを見た彼女は一瞬目を大きく開き、何かに気づいたような驚いた表情を浮かべたが、それをすぐに消す。
「ふーん。まぁ、良いわ。私はリキュア。
あの子達も同行したいみたいね」
リキュアと名乗った彼女はグリフォンの背に女王のように横にもたれかかる姿がやけに似合っていた。
ディートは訝しげに後ろを振り返るとあの姉弟が溢れんばかりの大きな荷物を背負って走ってくるのが見えた。
その姿を見てディートは久しぶりに深いため息を吐いた。同時に本人ですら気づかないほどのわずかな微笑みを浮かべた。
彼は偶然の出会いを受け入れた。
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