梨衣と颯太

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それは、微風の吹き抜ける夏の日だった。 《颯太》は、近所の3つ年の離れた《梨衣》と並んで、自宅から車で10分程離れた小高い丘に寝そべっている。 その夜は熱帯夜で、夕方のニュースでは仕切りに「過去最高の猛暑」を謳っていた。 都会のど真ん中はヒートアイランド現象とかナンとかで、さぞかし寝苦しいのだろう。 しかし、2人の住む街は街というのも烏滸がましいような田舎町だ。 夏のこの生暖かくも、肌に絡むような風が却って心地良くもある。 颯太は梨衣の腕がギリギリ自分のに当たらないようにして硬直していた。 鼓動が高鳴り、草木のざわめきが聞こえない程、颯太の体の中が熱くなっている。
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