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チョビ…小学校三年生の時だっただろうか?家の近くの自動販売機の脇で綾が小さな子犬を見つけてきた。ダンボールに入れられた可愛い子犬。ダンボールの中には手紙が入っていて確か…こう書かれていた。
[どうかこの子を可愛がってあげてください。見捨てないで下さい。優しい人に拾ってもらえたら…本当にごめんなさい。]
僕は綾が拾ってきた子の子犬がとても気に入っていた。僕と綾は、この子犬にチョビと言う名前をつけた。理由は特にはないが綾に言わせれば小さいからチョビだと言う。
チビじゃ可愛そうでしょ?チョビにしよう?
確かあの時、綾はそういったと思う。
綾の家はアパートだったから僕はその子犬を家につれて帰った。綾も一緒だった。僕の母さんに二人で泣いて飼ってもらえるようにお願いしてた。母は、快く認めてくれた。それからというもの、綾は毎日のようにうちに来ていた。綾と僕とチョビはいつも一緒だった。一緒に遊んだり、喧嘩したり…時には日が暮れるまでおしゃべりしたり。チョビが一緒だと何故か二人はいつも笑っていた。
しかし、チョビは僕と綾が小学校六年生のときに交通事故で死んでしまった。
悲しさとともに大事な友達を失った辛さの中で僕は途方にくれていた。そんな時に励ましてくれたのはいつも泣き虫の綾だった。時は流れて、綾は隣街へと引っ越してしまった。何も言わずに…僕の前から消えてしまった。そんな昔の思い出を僕は頭の中で想っていた。
綾「あの時は…ごめんね、何も言わないで。」
僕「いいよ、もう昔の事だろ。気にしてないよ。」
綾「ありがと…」
綾の声は何故か潤んだ声に聞こえた。
僕「日曜日楽しみだな。」
綾「楽しみだね。早く海が見たいなぁ。」
こんな話をしながらあっという間に僕の家についてしまった。
僕「じゃあ日曜日な。」
綾「うん。じゃまたね、バイバイ。」
僕「おう。」
こうして今日も一日が終わった。綾との昔話の中で、ほのぼのとして安らぎの時間を過ごせた僕は、なんとも言えない充実感のようなものを感じていた。日曜日はいよいよヨットに乗れるのかと想うと新鮮な気持ちだった。いろいろな事を考えて今日も眠れぬ夜になりそうだ。
明日も晴れるといいな。
続く
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