六月中旬。

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食堂から外へ出て、講義館の間を抜け、本館まで続く小路へ向かう。メタセコイアやらキンモクセイやらが植えられた小路は人通りが少なく、そこに点在するベンチに糸郷は座っていた。隣に座ると、糸郷が話し始めた。 「所属してるサークルがあるんだ」 「うん」 「一緒に来てくれ」 「やだ」 即答してみた。というか、枝葉末節を省き過ぎである。説得するつもりならもっと言葉を尽くして欲しい。交渉が下手なのは昔から変わっていない。 「……お前な……」 「何のサークルだよ。それを教えろ」 「普通のサークルだよ。時々集まって話するくらいの」 「実が無えなあ」 だから、もっと言葉を尽くせと言うに。 「うるせえなあ、付き添い頼んでるだけなんだからいいだろ?」 「上からものを言うな!」 それからしばらく、ああだこうだと押したり引いたり掛けたり割ったりの会話が続いた。説明を求めても、来れば分かるからの一点張りで、糸郷は説明しようとしない。そろそろ話を切り上げようと思い、ベンチから腰を上げて糸郷に言った。 「だから、なんで僕が行かなきゃ──」 「学食のカツカレー」 揺らぐ僕。 こいつ、意外と交渉上手か? まあ、そうまでして僕を連れて行きたいと言うサークルに、興味が無きにしもあらずになってきたし。 いや、やっぱ、カツカレーの魔力。 「なあ、来てくれよ」 「……サラダも付けろ」 ちょっと粘ってみた。 少し悩んだ後、糸郷は手を差し出してきた。 こうして僕は、日曜を糸郷と共に無駄に費やす事に決めたのだった。 あんな事になるとも知らずに。
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