六月中旬。

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日曜午後、混み具合はまずまず。そんなファミレスの中でも、一目で待ち合わせの相手が判った。 何と言うか、「ちぐはぐ」な奴らであった。「奴ら」と言うからには「集団」であって、「集団」と言うからには何らかの統一性が見い出せそうなものだが、奴らにはそれが無かった。 「……リーマンとOLとホストとガキとロリータ?」 うん、リーマンとOLとホストとガキとロリータだ。だってそんな風にしか見えない格好だもん。 サークルと聞いていたので大学の関係かと思いきや、何だこの展開。とりあえず糸郷に話を振ってみた。 「あれが君の待ち合わせ相手達かい?」 「ああ」 会話が途切れた。連れて来た癖に(カツカレーに釣られたのだが)、何の説明も無いのかと糸郷の顔を見ると、何やらこわばっている上にほんのり赤い。視線は集団に注がれている。 ……ああ。 「ユッカ、ちょっとこっち」 返事を待たずに糸郷の腕を掴み、物陰に移動。店員に不審がられたが無視。 「何だよ」 「しのぶれど、色に出にけり……」 「……!」 わあ、リトマス紙みてえ……。 酸性だっけ、アルカリ性だっけ。 「なるほどねー、そういう事かー、ふーん」 「ばっ、違うって、それは──」 「隠すなよ。ていうかそれで隠してるつもりか?」 「………………」 やーだー、耳まで真っ赤ぁー。 糸郷は黙ってしまった。つまりはあの集団の一人に恋焦がれている真っ最中だと。 青春だねえ……。 「ま、待ち合わせしてんだろ? 早く行こうぜ。ていうか君が紹介しなきゃ僕の立場が無い」 「うん……」 何とか落ち着いたらしく、糸郷は集団の座っているテーブルへ向かった。 「青春だねえ……」 一言呟いてから、糸郷の後に続いた。店員に不審がられたが無視。
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