七月上旬。

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「それで、本当に浴衣くんが犯人だったらどうする?」 「非常に心苦しいですけど、国家権力たる税金泥──警察に引き渡しましょう。それが妥当です」 「明さん、栄崎さんの前でそのジョークは厳禁ですよ」 「えー、でも逃げられるかもよ?」 「まあ、大丈夫でしょう。浴衣さんなら、殺し名としてもやっていけるでしょうからねー」 「相変わらず分かりにくいぞー」 タガくんは微笑みながらわしわしと明の頭を撫でている。非常に微笑ましいのだが、青年が少女を可愛がっているこの光景が近親相姦っぽく見えるのは気の所為だろうか。別に他人同士だから、万一くっついても問題は無いのだが。そう言ってみたら、爰が自慢の金髪をいじりながら話し始めた。 「いやいや、愛の形は人それぞれじゃん? 年の差はあるけど、それだって全然良いと思うけど」 それを聞いて侘助の一言。 「それより、互さんの性質上、浮気の可能性が常人よりも高い、という事に留意すべきかと」 「おお、流石ワビッチ、着眼点が違う」 「ヘタレロシア人みたいなその呼び方は却下します」 五人中二対二でボケとツッコミが居て、それぞれの役割を全うするというだけで、会話とはここまで進まないものだろうか。今日の議題の三割も進展していない。「もしこの会のメンバーが犯人だったら」なんて、冗談で言ってみた途端、これである。こんな言い方はあれだが、虎子がいないだけましかもしれない。 日曜午後、ファミレスの一角。 それぞれが頼んだメニューは既にそれぞれの体内へ吸収され、テーブルの上には中身の入ったドリンクバー用のコップが五つ載っているだけだ。 ボケ倒す明はココア。 甘やかしながらツッコむタガくんと本を読みながらツッコむ侘助は烏龍茶。 キャラ通りのバカを演じる爰はジンジャーエール、貧乏クジ(ジャンケンにより決定した議長)の僕はオレンジジュース。みんな、二杯以上は飲んでいるはずだ。 ……帰ろうかなあ……。
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