六月中旬。

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「ああ、分かったぞ。さては『日曜日に女を捕まえて回すから、お前も来いよ』なんて、先輩から誘われて断り切れなくて、僕を道連れにしようって魂胆だな? ユッカ、いくら僕が腹黒でも、犯罪まがいの事に首を突っ込みたくはないぞ」 下品に茶化してみた。 これでこいつが怒ればこの話はお流れだし、まともに応対されても茶化しに茶化してやり過ごすつもりなので、どっちに転んでも僕の損にはならない。 というか、相手からの頼み事という時点でイニシアティヴは僕にある。 しかし、糸郷は黙り込んだまま何の反応も示さない。 しばらくの沈黙の後、意気込んで糸郷が口を開いた。 「場所を変えよう」 唐突に舞台変更を提示された。 頷く間も無く糸郷は、さっさと食器を片付けて食堂を出ていった。 今の時間帯はそこまで人が多い訳でもないから、別に人目を気にする必要も無いと思うが。 ………………。 面倒臭い。 結局、僕は食器を片付けて、糸郷の後を追った。
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