カラス

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 秋の空は、  どこまでも  碧く、  深く、  遠く、  眺めていると、  引き込まれて  しまいそうな気がします。  遠くに見える  無機質な団地の建物と、  高圧線の鉄塔の辺りに、  ほんの少し、  白い鰯雲が  見えているくらいで、  頭の上は、  本当に真碧な、  深く遠い空が  横たわっています。  音は聞こえませんが、  その深い空の碧を、  二条の飛行機雲が、  裁ちバサミで  布を裂くように、  スルスルと割かちながら  昇って行くのでした。 「ドコを見ているの!? よそ見ばっかりして!」  担任の仁木先生です。  眉間に皺を寄せて、ぼくを睨んでいます。 「よそ見ばっかりして!」    って、言われても、そんなに、しょっちゅう、いつもよそ見をしているつもりはありません。
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