遺作

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それからというもの、おかぁは時間さえあれば外泊許可をもらい、家に帰っては私の着物を縫い、また病院に帰ってきて抗がん剤をうつ生活を繰り返す。         おかぁが私の着物を縫ってくれている事は嬉しかったけど、心の中ではヒヤヒヤしていた。     いくら自分から言い出した事とはいえ、無理をしているのは目に見えてわかる。     言い出したら聞かない事はみんなわかっていたけど、私だけのおかぁじゃない。   みんなが必要としている人を私の都合で振り回しているようにしか思えなかった。         それでも私には応援する事しか出来ない。 外泊している時、実家へ遊びに行っても邪魔しないようにするぐらいしか出来なかった。        
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