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病棟には2ヶ所におっきなソファーがいくつも置かれている。
テレビも置いてあり、そこのテレビは無料で見れる。
患者さんやお見舞いに来た人達が、気兼ねなく話せるように用意された場所だった。
点滴が終わると、だいたいはそこに移動して私とおかぁはしゃべっていた。
あの時、何かを取りに病室へ私だけ戻った時だった。
ナースステーションに主治医の先生を見つけ、軽く会釈をする。
すると先生が、
『すみません!!』
と言って追いかけてきた。
『1回目の抗がん剤の結果が出ました。
…残念ですがあまり効果はなかったみたいです…。』
そう言って、入院する前に撮ったレントゲンと、抗がん剤をうった後に撮ったレントゲンを見せてくれた。
明らかに効いていない。
むしろ大きくなってないか??
私が見た感想だった。
先生が言う。
『効果のない薬をいくらうっても意味がないので、お母さんには腫瘍が少ししか小さくならなかったと言って、違う薬に替えます。』
と…。
『わかりました。
お願いします…。』
それだけ言うと、先生はまたナースステーションへと戻って行った。
あんなに元気やのに…
今こうして笑ってる間にも肉腫はどんどん大きくなっている…。
私が見たおかぁの肺のレントゲン写真は、両方の肺の半分ぐらいを埋めつくした肉腫が映っていた。
これさえ無ければおかぁは元気やのに…。
そう思いながら、おかぁが待つソファーへ早足で行く。
こうして抗がん剤の1回目は終わった。
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