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「ところで、ミオさんはどうしてまたここに?」
ニコニコと効果音が聞こえそうな笑みを崩さずにめぐみは問う。
未央は暫時答えようか迷った後、目線を下に口を開いた。
「昨日、定期券、無くしちゃって‥‥」
もしかしたらここかも、って思ったんですけど‥‥
質問に答えたにも関わらずめぐみは何も言わない。
沈黙が二人を包む中耐えきれなくなり顔を上げると、めぐみは笑っていた。今まで以上に。
「な、」
なんですか?
疑問の言葉は最後まで発せられる事はなく、二、三歩下がった未央を追うようにしてめぐみは前へ出た。
「あぁ、そうだ」
やっと喋ったかと思ったらわざとらしく手を叩き、右手の人差し指を立てる。なんてベタ。
「ミオさん、漢字を教えていただけないでしょうか?」
「は? な、なんでですか?」
「いえ、嫌ならいいんです」
ふざけてるんだろうか。未央は腹が立った。
本気で誰かを殴りたいと思ったのは初めてだ。頼むから質問に答えてくれ。
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