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シリアが産まれたのは『ミッシェリーナ』という“不死鳥”を身に宿した魔女一族。
この一族は…否、不死鳥は“生命”を司る神とされている。
美しき焔の翼と鋭い爪、そして嘴とで死を導き、己が体内を流れる血により傷や病を癒し、また死者を甦らせ、生者には永遠の生命を齎すのだという。
“生”と“死”
これは陰陽であり、不死鳥は陽…“生”の象徴であった。
だが光の神故に、日の光に影が生じるのと同じく、その闇もまた、比例して深く濃い粘着質なものとなり、今ではもう“生”というより寧ろ“死”の神である。
シリアは一族の長として、胎内にこの不死鳥を宿している。
その力で不老不死の身となった為、身体の成長も二十歳くらいで止まった。
ミッシェリーナの長として、この世に生を受けた者が死を迎える事が出来るのは、後継者として我が子に不死鳥を継がせた時のみ。
不死鳥は、女の胎内…つまりは子宮内で、母から胎児に憑依する。
故に、ミッシェリーナは女系一族であり、女から女児へ…さながら女性特有のミトコンドリアの如く、不死鳥は自らを一族の遺伝子に刻み込み、再生を繰り返してきた。
その為、子が授かるまでは己が胎内に不死鳥を宿し、永遠の生に耐えなくてはならない…そんな負い目を感じつつも、シリアは一族の優しさに包まれ、それなりに幸せを感じていた。
忌むべき、あの惨劇が彼女を襲うまでは…。
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