9人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
1
ピピッ…ピピッ…。
すぐ近くで、無機質な電子音が鳴り響いていた。
「………っ!」
北野八重子は、声にならない叫びを上げてベッドから跳び起きた。
呼吸は荒く、寝汗で湿ったパジャマがひどく気持ち悪い。
「……夢……?」
額に張り付いた前髪をかき上げながら、昨夜の事を思い出す。
黒い女生徒の影。
夢というには、生々し過ぎる。
「……M……」
八重子は畏れと共に、その言葉を口にする。
しかし。
『早く起きなさい、八重子!』
キッチンから聞こえてきた母親の怒声に、八重子の思考はかき消された。
(きっと、悪い夢でも見たんだ)
そう思い直し、八重子は鳴りっぱなしの目覚ましを切ると、一階へ下りていった。
■
最初のコメントを投稿しよう!