**私も

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いつものように話しかけてくれた君 相変わらず君の話は面白くて とても心地好かった 成長途中の170センチの背とか 笑ったときにみえるすき間のあいた前歯とか 大笑いしたときの目尻のシワとか 黒く焼けた肌とか 何が好きで何が嫌いだとか 鼻をかくクセとか なんだって知ってる 考えてる事以外は だんだん君の顔が真面目になっていった その真面目な顔で 君は突然 頭を下げながら 「付き合って下さい」 中2のとき初めてクラスが一緒になった 趣味が一緒で仲良くなった 私は一人でボーッとすることが多くて 昼休みに外を眺めてた いつの間にか君が隣にいて 君は突然 笑いながら 「好き」 私は冗談だと思って 「ありがとう」 と言った 一瞬悲しそうな顔をして 君は教室をでていった 君はいつも突然で 冗談か本気か分からないことをサラリと言う 私はそれを 冗談か本気か考えて大人なフリをして答える あの日君が言ったことは冗談かと思ってたけど いつも半開きになってる口がキュッと閉まっていて 本気だと分かった 余裕かまして 大人なフリしてた私がどこか旅に出掛けたらしい 生まれて初めて頭ん中真っ白で何をしゃべったかなんて覚えてない ただ覚えているのは君のその一言の答えを言えなかったことだ いつもガキっぽくしてた君は いつも大人のフリしてた私より 大人だった あの日から君をみる度にあの一言が頭の中に蘇る もしかしたらあれは本当は私の夢だったんじゃないか 私の想像だったんじゃないか でも私に向ける君の視線が現実だと語る その気持ちはいつから? なんで私なの? もしかして今までのも本気だったの? 私の鈍感さが憎い ちゃんと答えられなかった私が憎い いつものように話しかけてくれて 私を笑わせてくれて 相変わらず君の話は面白くて とても心地好かった 君が他の子に話しかけていて 前までの私にはどうでもよかったのに 何故かその子と君を離れさせたくて でも私にはそんなこと出来なくて 夏休み前の終業式も 帰りの下駄箱も 君のあの坊主頭を探してしまう 長い夏休みが終わって 少し伸びた坊主頭を 少し焼けた腕を 探し求めている私と もしかしたらウヤムヤな私を嫌ってしまったんじゃないかと 考えている私と 遅すぎたかもしれないけど 私はあの日の君のように 突然君に言いたい 「私も好き」
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