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ナイトクロウ。
この世界が誕生した時より、この世界の闇を牛耳る存在として生きる吸血鬼の王。
紅い月の夜─人間の血が一番美味となる夜─に特に暗躍し、自らの妃、レクイエムを探し求めている。
その資料には残念ながらそれだけしか書かれていなかった。
「世界誕生の時からか。そんな奴が何故日本などという小国に現れたのかな…」
やれやれと椅子に座る明日把。
「やはり、レクイエムというお妃様を探してらっしゃるのでしょうか…?」
要が不安そうに眉をひそめる。
「不安にならなくても、要は僕が守るよ。安心してくれ…」
明日把はそんな彼女を安心させるため笑いかける。
「はい…」
それで要の緊張はほぐれた。
「それと、これは僕の憶測だが、レクイエムはもう見付かったのではないかな…」
明日把が言った。
「…!?」
その言葉に固まる鈴奈。
「どうしてですの?」
「先日、男性警察官も犠牲になった。今まで女性ばかり狙っていた奴の好みが急に変わる確率は低い。そう考えれば、もう一体の吸血鬼、そのレクイエムとやらが現れたと考えるのが妥当だろ?お前もそう思うよな?雪森…」
明日把は鈴奈に問掛ける。
「………」
しかし、彼女は反応しない。
「雪森?」
「え!?あ、うん!!そ、そうだね!!」
鈴奈は慌てて答えた。
「おかしな奴だ。さ、もう気が済んだだろ?今日はこれくらいにして、君も食事を食べていくといい…」
「先輩の家には連絡しておきますね?」
「え…あ、うん。ありがとう…」
書斎を出ていく明日把の後ろ姿に、鈴奈はナイトクロウを重ねていた…
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