二章:ヴァンパイアの王

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ナイトクロウ。 この世界が誕生した時より、この世界の闇を牛耳る存在として生きる吸血鬼の王。 紅い月の夜─人間の血が一番美味となる夜─に特に暗躍し、自らの妃、レクイエムを探し求めている。 その資料には残念ながらそれだけしか書かれていなかった。 「世界誕生の時からか。そんな奴が何故日本などという小国に現れたのかな…」 やれやれと椅子に座る明日把。 「やはり、レクイエムというお妃様を探してらっしゃるのでしょうか…?」 要が不安そうに眉をひそめる。 「不安にならなくても、要は僕が守るよ。安心してくれ…」 明日把はそんな彼女を安心させるため笑いかける。 「はい…」 それで要の緊張はほぐれた。 「それと、これは僕の憶測だが、レクイエムはもう見付かったのではないかな…」 明日把が言った。 「…!?」 その言葉に固まる鈴奈。 「どうしてですの?」 「先日、男性警察官も犠牲になった。今まで女性ばかり狙っていた奴の好みが急に変わる確率は低い。そう考えれば、もう一体の吸血鬼、そのレクイエムとやらが現れたと考えるのが妥当だろ?お前もそう思うよな?雪森…」 明日把は鈴奈に問掛ける。 「………」 しかし、彼女は反応しない。 「雪森?」 「え!?あ、うん!!そ、そうだね!!」 鈴奈は慌てて答えた。 「おかしな奴だ。さ、もう気が済んだだろ?今日はこれくらいにして、君も食事を食べていくといい…」 「先輩の家には連絡しておきますね?」 「え…あ、うん。ありがとう…」 書斎を出ていく明日把の後ろ姿に、鈴奈はナイトクロウを重ねていた…
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