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もうすぐ日が暮れる頃、俺は晴と歩いていた。
朝と同じ道だが晴の様子はおかしかった。
「どうした?」
「えっ?」
顔をあげた晴の表情は苦悩に満ちていた。
「何かあったのか?」
「・・ねねっ、空斗は何かみんなに嫌われることをしたの?」
「はぁ??」
「みんな、空斗が悪い奴みたいなこと言ってるよ?」
「・・・人に合わせられない人は、誰かに嫌われ、その誰かは、誰かに同じことを要求し、それでも直らない場合は、その人を追い詰める嘘をつく。」
「何のこと?」
「人の噂がでる原理。そんなこと悩んでたのか。」
「・・・難しい。」
「まー、要するに人に合わせられない人にはそれなりの嫌がらせをするってこと。」
「そっかぁ・・・あー!だから空斗の周りはいつも大雨なんだね。」
「えっ?」
「無意識のうちに作ったバリア」
晴が言ったことは正しかった。俺は無意識のうちにバリアを作ったんだ。
だから、誰とも口をききたくなかった。
俺自身に触れられるのが怖かったんだ。
でも・・・・これ以上バリアを薄くしたくない。
「・・空斗?」
「もう、俺にかまうな。」
「えっ?」
「頼むから、もう俺の前にあらわれないでくれ。」
「何で?」
「何でって・・」
「怖いんでしょう?」
「・・・」
俺のなかに入ってこないでくれ。
お願いだから。
「雨がやんでいる世界を見るのが怖いんでしょう。今までカバーしてみてたから。」
来るな。
来るな。
「お前に何がわかっ・・」
「大丈夫だよ。私はここにいる。何があっても。ここにいるよ。」
「えっ?」
「一人が嫌なら私は絶対にここにいる。空斗の隣にいます。誓います。」
そういいながら、晴は俺の手をぎゅっと握った。
一瞬、夕焼けが赤く見えた気がした。
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