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「今年1年、皆さんの担任になった春田です。1年間、受験もあって大変だけど頑張って過ごしていきましょう!」
クラスの誰もが受験という重みのある言葉を受け取っていた。
啓一は特に感じる物が無いのかボケーッと窓の外を見ていた。
「それから明日は席替えをします。もう3年だから今更名前が解らないとかは無いでしょうし。」
クラスが歓喜に湧いた。
(席替えの何が良いのかね。)
啓一がそんな事を考えていると校内放送が流れる。
【3年2組細田啓一。細田啓一、至急、鞄を持って職員室まで来るように。】
クラスメートが一斉に啓一を見る。
『俺、何もしてねえよ?』
「細田、良いから職員室に行きなさい。」
『は~い。』
啓一はそう返事をして教室を後にした。
「ねぇねぇ!平井ちゃん、平井ちゃん!細田の奴何したんだろうね?」
裕子の前の席の美緒が話しかけてくる。
『さぁ?でも…教室に居ただけだから別に怒られるわけでは無いんじゃない?もし怒られるなら健太もセットで呼ばれるだろうし。』
美緒は裕子の言葉に納得して前を向き直した。
「はいはい、静かにしなさい。」
春田はクラスを落ち着かすように手を叩いた。
職員室に行くと副校長が啓一に受話器を渡した。
『…も、もしもし?』
啓一は恐る恐る電話をとると母親が泣きながら電話を掛けてきていた。
『どうしたの?』
「田舎のおばあちゃんがね…亡くなったんだって…。」
『えっ!?1月にじいちゃん死んだ時、元気だったじゃん!』
「今日急に亡くなったのよ。すぐに向かうからすぐに帰ってきて。」
『わかった。すぐ帰るよ。』
啓一は副校長に受話器を渡し慌てて職員室を出た。
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