第一幕

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翌日。 教室に朝一番に裕子はやって来た。 (まだ誰も来てないか。) 一人席に座り本を読み始める。 (静かな教室って不思議…。) 裕子は斜め後ろの啓一の席を眺めた。 (昨日は一体何だったんだろう?) 時計を見ると8時10分を指していた。校舎の外が俄かに賑やかになり1人、2人と教室に入ってきていた。 「平井ちゃん。おはよ~!」 『あっ、理恵ちゃんおはよ~!』 ぞろぞろ廊下を歩く生徒の中に裕子は健太を見つけた。 (すぐに教室はうるさくなるわね。) 裕子はそんな思いを抱きながら理恵や美緒と話していた。 どれくらい時間が経っただろう。 8時30分を告げるチャイムが鳴る。 教室に向かう緊張感のある足音が聞こえてきた。 ドアを勢いよく開け春田が入ってきた。 「皆さんおはようございます。」 裕子は啓一の席を再度見た。裕子の行動に啓一の不在を気にする人間が居たのを知った春田は出席簿に目を通しながら言った。 「細田はおばあちゃんが亡くなったので今日から忌引きで休みです。」 春田の言葉に2年の時啓一と同じクラスだった生徒が聞いた。 「細田1月もそんな事言って休んでませんでしたっけ?」 「1月はおじいちゃんが亡くなったのよね。」 春田とクラスメートの会話を聞いて美緒が裕子に問いかけた。 「ズル休みじゃないの?」 『そんな事言わないよ。わざわざおばあちゃんを死なしてまでズル休み穫るとは思えないじゃない。』 「そっか。」 美緒は納得しながら前を向いた。 「よし、やろう。今日は席替えするわよ。」 春田は手を叩いてその場を締めて言った後、何もなかったように出席を取り始めた。
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