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啓一が忌引きで休んで1週間が過ぎた。クラスは啓一が居ない事が当たり前のような雰囲気になりつつあった。
「もう細田の奴来ない方が良いんじゃない?そっちのがクラス上手く回るし。」
クラスの誰かが不意に言った言葉に皆が笑いながら頷いた。裕子はそんな雰囲気に嫌悪感を抱いていた。
裕子は元は虐められていた。ひょんな事から2度啓一に助けられてから自分に対しての嫌がらせが沈静化していた。
暴力での解決が気にかかるが少しは感謝をしていた。
啓一は決して根は悪くないと裕子は信じていた。
しかし他の人間は外見の悪い問題を起こす厄介者としてしか啓一を見ていなかった。
虐められていた経験故、裕子はそういった疎外する心に対して嫌悪感を抱くのは当たり前であった。
「皆の言う通りだよね。」
美緒と理恵は笑いながら裕子に言った。
『理恵ちゃんに美緒リン…気持ちは解るけどそんな事思っちゃ駄目だと思うよ。』
裕子の反応に理恵と美緒は驚いた。
「なんで細田をかばうの?」
「平井ちゃんがどうかしちゃった~!」
『…細田だって今悲しくてしょうがないかもしれないじゃない…。』
裕子がそう言った時、あの歩き方の悪い癖のある足音が廊下に響き渡った。
ドアが勢い良く開き啓一が入ってきた。
『はっはっは…おはよう!諸君。…もう来なくていいとか思ってたべ?はい、残念!』
啓一の入り方を見た美緒は裕子に聞いた。
「あれで悲しくてしょうがない感じだと思う?」
『ははは…。』
裕子は引きつった顔で苦笑いを浮かべた。
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