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『あれ?俺の席は?』
『ここだけど。』
席を探す啓一に裕子は自分の隣の席を差した。
『げっ!?マジで?』
啓一が教えられた席は一番前のド真ん中。目の前には教卓がある席だった。
「席替えの日に休んじゃったしね~。」
美緒は意地悪そうに啓一に言った。
『そんな…好きで休んだわけじゃねえのに…。』
啓一がうなだれた瞬間皆は一様に笑った。しかし啓一の伏せる顔が少し悲しみに満ちているように裕子には見えた。
(気のせいかな…?)
啓一はどうあがいても変わらない現実を受け止めるしか無かった。
『…しかしお前も可哀想にな。俺の隣なんてよ。』
『アンタが静かにしてくれたら可哀想じゃないわ。』
啓一をアンタ呼ばわりする裕子を皆ギョッとした顔で見ていた。
裕子はまだ2日しか同じクラスでは無いがこの2日見てる限り、他のクラスメートが抱くような恐怖心や疎ましさは必要無く、同級生として話すようにしても問題無いと直感した。
『アンタって…お前はお袋かい!?』
啓一は笑いながら裕子にツッコミを入れた。
『まぁ…この席じゃ静かに寝てるしか無いか。』
『いびきは止めてね。』
『…はいはい。』
2人の会話を回りは呆然と見ていた。
その状況を打破したのは桜井であった。
「お前…女だからそんな優しいの?」
『…自分より確実に弱い相手にいきり立ったって…藤井とかと同レベルになるだけだし…あんなんと一緒になりたくないし。』
啓一の答えに桜井は苦笑いを浮かべながら自分の席に戻った。
「いつまで喋ってる!皆席につけ!」
気付くと春田が教壇に立っていた。
皆は蜘蛛の子を散らすように自分の席に戻っていった。
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