第一幕

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朝のホームルームが終わり1時間目の用意してる時であった。 啓一は机の中に入っていた教科書を出しながらしきりに右手を握っていた。 (まだ嫌な感覚が消えない…。) 啓一は右手を振り目を瞑る。大きく息を吐いて何事も無かったようにポケットに手を突っ込んだ。 「葬式行って寝なかっただろうな?」 桜井は啓一に話しかけた。裕子はなんて不謹慎な事を聞くんだろうと思ったが顔には出さずにいた。 『あははは。そんな暇無かったよ。』 「でも啓一は泣かなそうだな。」 他のクラスメートも言った。 『俺苛められっ子だからすぐ泣いちゃうよ~。』 啓一はおどける様に話す。 クラスメートが不謹慎な質問を啓一にぶつけ続けていると1時間目を告げるチャイムが鳴り響いた。 皆一斉に席に着き教師が来るのを待っていた。 啓一は少し下を向いて大きく息をした。 『細田…?』 裕子の問いかけに啓一はハッとして顔を上げて軽く微笑んで言った。 『うるさかった?ワルいワルい。』 『いや…そうじゃなくて…』 裕子が言いかけた時教室の扉が開いた。 「は~い。1時間目始めま~す。」 体格の良い中年の教師は日直に号令を促す。 号令直後、教師は啓一に話しかけた。 「細田、もう大丈夫か?」 『えぇ。いつも通り!早く寝たいんで子守授業お願いします。』 啓一は笑いながら言うと教師は苦虫を噛み潰したような顔をしながら黒板を向いた。 啓一はそれを確認して机に伏せて眠り始めた。 しかし、誰一人気付く事が無かった。 (嫌な感覚が消えない…。) 啓一は右手を握り一筋の涙を流して目を閉じた。
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