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「君の…」
『馴れ馴れしい。啓一って名前があるんだよ。』
母親は泣きながら弁護士に頭を下げているだけになっていた。
「すまないね。啓一君。実はお母さんはお父さんと離婚したいと私に相談しに来たんだ。」
『えっ…?』
離婚という言葉にイライラして強気に出ていた啓一も止まった。
確かに両親は長いこと別居していた。
…が、別居していても互いが互いの家に行き来していて家族で出掛ける事もあった。
子供の啓一にとって離婚という言葉は寝耳に水であった。
『えっ?なんで?』
啓一は母親に向かって問いかけた。
「話せば長くなるし子供に話す事じゃないのよ。」
涙ながらに叫ぶように振り絞る母親の姿に愕然としていると弁護士が口を開いた。
「一応、お母さんの希望だと親権はお母さんが持ちたいらしい。啓一君は兄妹3人で妹と弟が居るね。啓一君に今この話をしているのはどういう意味かというと…」
『意味?じゃあ妹と弟はまだ知らないの?』
「まだ小学生だからね。」
弁護士はサラリと言った。
『それじゃ俺にも内緒に事を進めとけよ!』
「だから今君に話してる意味を話すところだから聞いてくれないかな。」
弁護士は啓一を宥めるように言った。
『意味、意味ってどんな意味なんだよ?』
啓一は怒鳴りながら弁護士に聞いた。
「啓一君は今年15歳だ。法律的には君には選べる権利があるんだ。」
『はぁ?選ぶだと?』
「そう。父親の元に行くのか、母親の元に行くのか…を選ぶ権利だよ。君の答え1つで私の動き方も変わるんだ。」
弁護士は最後の一言をワザと強調して言った。
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