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「しかし…啓一もしっかりしろよ!」
『そう言っても…ほら…僕心臓悪いし…。』
啓一は生まれながらの心臓病を患っていた。幼い頃に手術をしていて根治はしていたが、胸に残る痛々しい手術痕、そして生活の制限が、彼をして虐められ役にしていた。
「俺より背がデカいのに何が体悪いし、だよ。」
『そ、そんな事言ったてさ…。僕と健太じゃ全然違うよ。』
啓一は少し肩を落としながら言った。
健太と啓一。同い年の従兄弟なのに見た目や気質がまったく違っていた。
「でも、そんな暗くなってるんだったら今が嫌なんだろう?お前…今のままで楽しいか?」
啓一は首を横に振った。
「だろ?…そうだ。お前、俺達と連めよ。そしたら藤井達は文句言わなくなるぜ。」
健太の問いかけに啓一は驚いた。
『僕が居たら迷惑になるよ。』
「…なんでお前はそんなに暗いんだよ!」
『健太には病気の気持ちがわかんないでしょ?自分にとってどうしようもない理由でイチャモン付けられて…。』
「わかんないな。わかりたくも無いし。でも俺は思うけど、啓一はそのマイナスな部分をひけらかして逃げてるだけだろうが。だから変わんないし虐められんだよ。」
健太の言葉が痛かったのか啓一は黙って教室に戻ろうとした。その時隣の教室から泣き声と罵声が聞こえた。
「や~い。鼻くそ女~。」
『なんでそんな酷い言い方するの?』
「うるせえブス~。」
啓一は普段はもめ事に首を突っ込まない。だが今日は何故か隣の教室に向かっていった。
健太は慌ててその後について行った。
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