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『はい。』
『あ、ありがとう。』
心なしか裕子の手は震えていた。
啓一は何かを見透かすように言った。
『別に穫って喰ったりなんかしねえよ。』
啓一は立ち上がって教室に戻ろうとすると裕子は落ちたノートを拾いながら言った。
『…暴力でしか解決出来ないのかな…?』
『あん?』
啓一には裕子の言葉が理解出来なかった。
『いや、なんとなく…。』
『仕方ない。やらなきゃやられる。それを俺に諭してくれたのは…平井。お前さんだ。』
『私は…そんな事諭してなんかない…よ。』
裕子は強気で言いたかったが啓一の威圧感に押し留まった。
「コラ!!また貴様か!」
生活指導の伊藤が啓一の前に立ちはだかる。
啓一は裕子と会話している間にその場から立ち去るタイミングを失っていた。
伊藤は階段下で鼻を押さえながら泣いている藤井と裕子の状態を見て言った。
「お前、平井と藤井に何をした!」
『は?平井には何もしてねえよ。』
「嘘つけ。お前みたいな悪ガキの話なんか信じられるか。いいから生活指導室に来い。」
『イトセン、無茶苦茶言うなよ。』
啓一の言葉に耳を貸さずに伊藤は襟首を持って引っ張っていく。
『おい!平井!オメーちゃんと説明しろ!おい!』
「こら、平井を脅かすな!」
『いや、脅かしてないって。お~い。』
啓一は平井に助けを求めるように手を伸ばしたが意味をなさずに伊藤に引っ張られ続けた。
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