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二人は咆哮が聞こえた方角へと走っていたが、小一時間経過しても一向に変わる気配の無い景色にうんざりしていた。
「これ……何?持久走?ある意味戦闘よりきつい……!」
「よくあることだ。」
「無いわよ!」
ルナは疲れでこれといって捻りもないツッコミを入れると、疲労が溜まってきたのか足を止めて深くうなだれた。
「さすがに……きつい……」
「だらしないな。無理矢理走らせてやろうか?」
「今のあたしはあんたに叩かれようが走らな――」
率直に走る気が無いという気持ちを述べようとしたルナが顔を上げた眼前に、剣を突き出しているスレイの姿が目に映った。
「走ります。そりゃもう疾風の如く駆け抜けますよ。今なら誰にも負けない気がしてきたので。」
「よし、走れ。」
「了解!」
スレイの恐怖に打ち勝つことの出来なかったルナは、ただ従うことしか出来ずに言葉通り疾風のように走りだした。
その心の中は悔しさで一杯になっていたが、後ろから迫り来る恐怖によって口に出すことすら出来なかった。
「(言葉が減ったら今度は実力行使かい!結局こんなんだし!)」
「速度落とすな。」
「はいー!了解了解ー!」
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