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涼しいとは言えないけれど、風が心地良く吹いている。
「すいませんでした…。」
琴音は、開口一番に謝った。
「いや、いい…。」
俺の頭は、外だろうと室内だろうと、どっちでも良かった。
そんな事に、深い意味を感じなかった。
「で、もう一度って何ですか?」
琴音は改めて尋ねた。
瞬間…頭が真っ白になった。
言いたかった事。
聞きたかった事。
あれだけ考えて、さっきまで煮え繰り返るくらいに頭を行き来していた言葉達を…。
全て忘れていた…。
「あ…えっと…。」
「何ですか?」
冷静に考えた事。
もう一度…言う事。
言わないといけなかった事。
目茶苦茶でも、きちんと伝えないとならない事。
「…。」
「…。」
「…俺、琴音が家に来てから、最初っから…。ずっと、きっと琴音に惹かれてた。」
話の切り出し方が判らなくて…。
俺は、最初から話そうと思っていた。
「…嘘臭いですよ、それ…。」
琴音は、からかうように笑った。
「琴音は、最初から…ありのままで、俺に接してくれた。飾ろうとしなかった…。可愛くなろうと頑張るのに、自分を隠さないでいてくれた。」
「…それは、少し違いますよ…?」
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