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琴音が家から出て行って…5日が過ぎた。
おかしな話で、3日前までは清々した気分だったのに…。昨日になって、落ち着けなくなって来た。
何より、本来の雇い主の親からも何の連絡もない。
琴音がどうなって、どうしているのかすら…このままじゃ判らない。
特に気にするつもりはなかったけど…事故にでも遭われたら、後味が悪い…。
そんな風に俺は、自分に言い訳しながらも、どこかで琴音を案じていた。
「平井。」
藤咲環(フジサキ タマキ)…。
同じ高校に通う、何故か俺をライバルだと言い張っている…ちょっと危ないヤツだ。
「何か?」
琴音で頭がいっぱいだと認めたくないが…俺は俺なりに忙しかった。
「君…こっちゃんの知り合い?」
こっちゃん?
…こっちゃん…。
「どこのアニメキャラの話だ?」
怪しい笑みを浮かべる環に、俺は冷ややかに答えた。
マジで今は、こいつの相手をしてる場合じゃない…。
「メイドはィィよねぇ…。」
更に嬉しそうに付け加える環。
「…。メイド?」
メイドで…こっちゃん?
こっ…こ…琴音?!
「要らないなら、僕の家で引き取るから、手続きとかさせてくれない?」
「何でお前んちに居るんだよ?!」
思考が追い付く前に、動揺していた。
環に掴み掛かるようにして、俺は声を荒げていた。
「こっちゃんから聞いたよ…。雇う事を考えたいとか言ったんだって?」
俺の質問に答えずに、環は尋ねた。
「何故、お前んちに居る?」
俺も、しつこく尋ねていた。
「…拾ったんだ。ダンボールの外に…“拾って下さい”って…。」
「…。」
琴音らしい…のか?
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