第1章~メイド様のお仕事

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「…とりあえず、先に言っとくけど、君は俺の父親に雇われただけで、俺に雇われたんじゃない。」 リビングに入るなり、俺は琴音に言った。 自分のテリトリーを、メイドになんて乱されたくない。 「…。」 「家事は嫌いじゃないし、どちらかと言えば自由気ままに、自分のペースで生活したいと思ってる。」 琴音が口を開く前に、俺は畳み掛けるように言った。 「…何がおっしゃりたいんですか?」 「君は、仕事で来たんだろうけど…。俺は、メイドなんて必要ないんだ。」 少し言い過ぎかも知れない。だけど、黙っていて仕事を任せても、俺の満足する結果にはならない事は目に見えていた。 「なるほど…。」 意外な事に、琴音はあっさりと納得した。 「…。ちなみに、琴音サンは…得意な仕事は何?」 肩透かしを喰らったせいで、俺は琴音に質問していた。 「得意な?」 「…炊事、洗濯、掃除…。他にもあるかも知れないけど…。何を得意として、雇われたの?」 「…私…。」 琴音は、俯きながら黙り込んだ。 「…面接のつもりで答えればいいよ…。」 面接での嘘は、いざ実践であからさまにバレる。 「面接の?…私が面接の時に、言ったままを答えれば宜しいですか?」 答えを思い出したのか、琴音は頬を上気させて言った。 「…そうゆう事だ。」 今までのメイド達と明らかに違う。琴音からは、そんな気配がした。 「私…。炊事も洗濯も掃除も大嫌いで、やりたくありません。」 「…。」
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