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「それから、上から目線で偉そうな態度を取られると、かなりムカつくんで、メイドとかやりたくないです。」
琴音は勝ち誇ったように、きっぱりと言った。
「…はあぁッ?!」
な、な、何言ってんだ?
大体メイドで採用されて、やりたくないって…。
「ただ…。」
「?」
急にしおらしくなって、琴音は言い淀んだ。
「“ご主人様”って…一度言ってみたくて…。」
「…。」
どう表現していいのか、解らない。
有り得ないと思われるかも知れない。
それでも、俺は琴音を傍に置きたい。
そう思っていた。
「そんな理由じゃダメですよね?…て、私も思ったんですが、採用されていて…。」
琴音は、照れながら言った。
「…採用でいい。」
「ホントですかぁ?!」
琴音は、満面に笑みを浮かべながら喜んだ。
「あぁ…。合格だ。」
琴音の素直さなのか、少し変わり者なトコなのか…。
俺にとって、何か欠落した部分を琴音に見つけた気がした。
「ッ!」
俺が自分の感情に惑わされていると、琴音は急に腹を抱えてうずくまった。
「ど、どうした?腹痛か?」
「…ご、ご主人様ぁ~…。」
消え入りそうな、か細い声で琴音に呼ばれる。
「何?どうした?」
「…お、お腹…。お腹が…。」
「痛いのか?」
「腹減ったぁ~。」
「…ぁ?」
「あ~もぉ、我慢出来ないですぅ~。ご主人様ぁ~、ご飯作って下さい。」
甘えるような、すがるような、媚びるような…。
これは、琴音の天然なんだろうけど。
俺は、とんでもないメイドに、目を付けられた気がした。
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