第1章~メイド様のお仕事

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「それから、上から目線で偉そうな態度を取られると、かなりムカつくんで、メイドとかやりたくないです。」 琴音は勝ち誇ったように、きっぱりと言った。 「…はあぁッ?!」 な、な、何言ってんだ? 大体メイドで採用されて、やりたくないって…。 「ただ…。」 「?」 急にしおらしくなって、琴音は言い淀んだ。 「“ご主人様”って…一度言ってみたくて…。」 「…。」 どう表現していいのか、解らない。 有り得ないと思われるかも知れない。 それでも、俺は琴音を傍に置きたい。 そう思っていた。 「そんな理由じゃダメですよね?…て、私も思ったんですが、採用されていて…。」 琴音は、照れながら言った。 「…採用でいい。」 「ホントですかぁ?!」 琴音は、満面に笑みを浮かべながら喜んだ。 「あぁ…。合格だ。」 琴音の素直さなのか、少し変わり者なトコなのか…。 俺にとって、何か欠落した部分を琴音に見つけた気がした。 「ッ!」 俺が自分の感情に惑わされていると、琴音は急に腹を抱えてうずくまった。 「ど、どうした?腹痛か?」 「…ご、ご主人様ぁ~…。」 消え入りそうな、か細い声で琴音に呼ばれる。 「何?どうした?」 「…お、お腹…。お腹が…。」 「痛いのか?」 「腹減ったぁ~。」 「…ぁ?」 「あ~もぉ、我慢出来ないですぅ~。ご主人様ぁ~、ご飯作って下さい。」 甘えるような、すがるような、媚びるような…。 これは、琴音の天然なんだろうけど。 俺は、とんでもないメイドに、目を付けられた気がした。
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