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「ご主人様…お伺いしたい事があるのですが…。」
普段から話し掛ける事がなければ、自ら話さない琴音が珍しく話し掛けて来た。
今朝は随分と明るく、何かを思い付いた様子だ。
「何だ?」
琴音の頭の中は未知だ。
家事が好きではないというのも、俺に取り入る為の口実かと思った。が、どうやら懸命にやっては失敗するので、本当に好きになれないらしい。
「思ったんですけど…メイドさんって、ピラピラのエプロンを付けてますよね?…ホラ、こんな感じな…。」
そう言って、琴音は雑誌のような物を見せて来た。
「あ~…実用性に欠けるよな…。」
“コスプレ名鑑”…そう書かれた怪しげな雑誌だ。
こいつ、一体どこからこんな雑誌を仕入れたんだ?
可愛さ重視なのか、ウケ狙いなのか…。
実際、こんな服を着て家事をしたら邪魔だろう。
「欲しいです!ってゆうか、琴音…この服じゃなきゃ仕事しません!」
「…。」
琴音の台詞に絶句した。
頭を整理しよう。
琴音は形から入るタイプなのか?
いや…この際、そこじゃない。
仕事しない?
琴音に仕事をする気があるのか?
仮にあるとして…。
この状況は…どうなんだ?
俺は少なからず、琴音の雇い主の息子だ。
そんな俺に、服を買えと言ってるのか?
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