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雇い主は俺じゃない。
俺の家に居るメイドだけど、俺のメイドじゃない。
こいつは、本当に雇われてるって事を理解してるのか?
どこから考えていいのか、判らなくなって来た。
「ご主人様は、見たくないですか?琴音のメイド服姿…。」
上目使いに尋ねてくる琴音。
「…。」
見たいか、見たくないか…。
見たくない訳ではない。
見たい?…違うな…。
見てもィィくらいか?
「特に興味はナイ。」
「ご主人様に興味がなくても、琴音には興味深々ですよ!」
まるで正しい事を言うように、強気に主張する琴音。
「俺にねだるのは、やめてくれ…。」
元を正すように、俺は琴音に言った。
「でも…。琴音は、ご主人様が選んだメイド服を着たいんですよぅ…。一つずつ…ご主人様が選んだメイド服がィィんですぅ。」
弱々しく、呟くように、それでも俺の耳に届くくらいの声で、琴音は言った。
「…。選んでやる。」
胸の辺りが、脈を打った気がした。
琴音のペースに巻き込まれてるつもりはなかった。
気付いたら、選んでやりたいと感じていた。
「本当ですかぁ?!わぁい、ご主人様…優しい♪」
嬉しそうに笑う琴音には、先程までのしゅんとした姿は見られなかった。
「その代わり、きちんと仕事もするように。」
「はぁい!」
琴音は更に嬉しそうに、返事した。
振り回されてるのは、俺なのか?
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