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パウントでは、また今日も怪盗B・Mが現れ、正面から堂々と入っては、金品を盗み逃走した。
まあ“堂々”と言っても、その速度は尋常じゃなく、まさに疾風の様に現れ疾風の様に去ってゆく怪盗なのだ。
博物館警備の駐在が、屋根伝いに逃げていく人影に向かって何発か発砲する。
既に当たる訳はなく、悪あがきというか、逃げる犯人に向かって発砲するのは社交辞令のようなものなのだろう。
──今宵は満月。
皮肉にも、月夜は、逃げるB・Mを美しく照らした。
──ザッ
暗がりの路地裏に、ブラックマスクの真っ黒なシルエットが降り立つ。
「今日もぉなぁんとか逃げきれたなぁ。神様ぁ、ありがとう~ございますぅ」
口元の黒いバンダナを首に下げると、そのバンダナは一瞬で白くなった。
同時に、黒いテーブルクロスを引き抜いていくかのように、頭の頂点から爪先まで、黒かった服装は明るい色の組み合わせに変化した。
どんな仕組みなのかは分からないが、獣に変身出来る人間が居れば、色の変わる布が有るのも不思議ではない。
この青年の名前は
『チェイス・C・アンペール』。
何を隠そう怪盗B・M本人である。
が、この“トロさ”がB・Mとは結びつかない為、一度もバレたことが無い。
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