隊長としての誇り

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「さて…サザールの方角は…」 ルークは空を見上げた。 コンパスが無いならば、太陽で方角を確認することがある。 ──が、それは進む方向が定まっている場合の話である。 「サザールって…どこだ?」 ──ルークは極度の方向音痴だった。 太陽を見るとか、それ以前の問題だったのだ。 軍隊には普通、完全な戦闘部隊の他に、給仕班や医療班、そして調査班等が有る。 率先して戦地に赴き、様々な情報を集めた後、全隊を案内するのが調査班の役目だ。 つまり、ルークは一度として地図なんか見たことは無い。むしろ、サザールという地名を頭に残していただけルークにしては立派だった。 「困った。実に」 本気で困っているようには見えない。 天然の楽天家なのだ。 ルークが居るのは、森。 ちなみに西に向かうとガイオーの森が有った場所なのだが──ルークが何者かの気配を感じ取った今では、関係の無い話だ。 「なぁ。見てるくらいなら道案内してくれよ」 ルークの周りに木はあっても人は居ない。 さすがに木に話しかけるほど疲れている訳でもないだろう。 「ばれていたのカ」 一本の木の上で銀色の鎧が煌めいた。
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